節税目的で利用される養子縁組のリスク確認

■養子の人数制限
・民法上、養子の人数制限はなく、何人でも養子にすることが可能です。
・相続税法上、実子がいる場合には養子は1人まで、実子がいない場合には養子は2人まで、法定相続人に含めることが可能です(相続税法15条)
■節税目的の養子縁組の是非
相続税の節税を目的とした養子縁組の是非については、様々な意見があります。2017年1月、最高裁判所が「節税のための養子縁組であっても、直ちに無効とはいえない」と判示したことから節税目的の養子縁組が増えてきています。
相続が発生する直前に養子縁組をしたり、被相続人が意思表示できない状態であるにもかかわらず養子縁組がされていたりなど、理由が当でない場合は否認される可能性があります(相続税法63条)。
■節税目的で利用される養子縁組のリスク
養子縁組とは、子供としての権利義務を付与する制度です。つまり、相続権を与えることになるため、遺産分割協議に加わり権利主張する可能性は考えておく必要があります。
相続権を与えるということは、財産を相続させない遺言を書いても遺留分は残ることを意味します。そのため、養子は遺留分侵害額請求権を行使し金銭請求をする可能性があります。
例えば、Aさんが長男の妻と養子縁組をした場合、その後、長男とその妻が離婚しても、養子縁組の解消(養子離縁)は離婚とは別の法律問題となります。つまり、Aさんが長男の妻との合意により養子縁組を解消できなければ、相続の際、離婚した長男の妻は相続人として残存します。
なお、養子縁組は相続権という権利を与えるものですが、その反面、養子に扶養義務を負わせるものになります。民法上、養子は直系血族及び兄弟姉妹の扶養義務を負うことになります。(民法877条)。下の図の場合、長男の妻はAさんの養子となることで、Aさんと長男・二男の扶養義務を負うという反射的効果を認識しておく必要があります。