タワマン節税に関する最高裁否決の影響

こんにちは! ひよこニュース6月号はお休みをいただきました。
楽しみにしていただいているみなさま申し訳ありません。
ひよこニュース7月号をお届けします。
令和4年4月19日、最高裁にて国側勝訴の判決となった、いわゆる「タワマン裁判」をご紹介します。
★「タワマン裁判」とは・・・富裕層の節税対策の一つとして、借入をし収益不動産を購入します。これを財産評価基本通達の定める方法で評価すると、相続税の評価がマイナスもしくはゼロになる、というものです。
タワマン節税と呼ばれるのは、昔から高級なタワーマンションの1室を購入し相続税対策をしていた名残です。最近では、収益不動産1棟を購入することが多くなっております。
この手法で収益不動産を購入し相続税をゼロで申告したところ、「著しく不適当であるから鑑定による評価額をもって評価すべき」とされ、更正処分等を受けました。この処分の取り消しをめぐって、裁判で争われました。
■相続税評価額の算定方法(財産評価基本通達)
1. 土 地 ・・・「路線価方式」と「倍率方式」の2つの方法があります。収益不動産が建築される場所は「路線価方式」が多いです。
2.建 物 (家屋) ・・・固定資産税評価額に1.0を乗じて評価します。つまり固定資産税評価額がそのまま相続税評価額となります。
3.賃貸している場合の補正 ・・・土地は「貸家建付地」、建物(家屋)は「貸家」として評価引下げをします。
■例外規定の発動
1.問題点
都心の収益不動産は、通常の相続税評価額と実勢価格(時価)に非常に大きな乖離が生じています。相続税対策をしたい富裕層は、金融機関から借入を行い、その資金をもって収益不動産を購入し、その乖離を使って相続税対策を実行している例が多くあります。
最高裁判所の判断
最高裁への上告が棄却される形で国税側の勝訴が確定しました。
理由は以下の2点になると考えられます。
①収益不動産購入にあたり被相続人による金融機関からの借入が「節税目的」であったこと
②相続税申告額が0円であったこと
2.今回の国税側の否認根拠(例外規定)
財産評価基本通達 総則6項では、以下を規定しています。
(この通達の定めにより難い場合の評価)
6 この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。
国税側では伝家の宝刀と言われる規定になります。上記規定中、「著しく不適当」とありますが、何をもって「著しく不適当」とは具体的には規定されていません。
今後の相続税対策に与える影響
今回の最高裁では、「総則6項」による「著しく不適当」の基準は明確になりませんでした。国税側が総則6項を用いるのは、行き過ぎた節税対策を牽制するときであり、むやみやたらに適用できないため、「伝家の宝刀」と言われる所以でした。しかしながら、今回の最高裁の判断を考えた場合、実質的には総則6項の適用に「お墨付き」を与える形とも捉えられます。今後、収益不動産を使った相続税対策を実行する場合には、非常に慎重な判断を迫られる形となったことは明白です。その意味で大きなインパクトを残したものと言えます。